中学校2年のときの話。
俺は家は漁師じゃなかったが海辺に住んでた。
というか前の浜から背後の山までせまくて細長い土地の町だったんで。
ほとんどの人がが海辺に住んでると言えるんだけどな。
それで今でいうビーチ・コーミングを趣味としてた。
当時はそんな言葉はなかったけど、簡単にいえば漂着物の収集のこと。
日本海側の北の方だったから熱帯の貝やヤシの実なんてのはまず見られなくて、日本にない漢字やハングルが書かれた浮きなんかが多かったが、ときおり変わったものもあった。
俺は家は漁師じゃなかったが海辺に住んでた。
というか前の浜から背後の山までせまくて細長い土地の町だったんで。
ほとんどの人がが海辺に住んでると言えるんだけどな。
それで今でいうビーチ・コーミングを趣味としてた。
当時はそんな言葉はなかったけど、簡単にいえば漂着物の収集のこと。
日本海側の北の方だったから熱帯の貝やヤシの実なんてのはまず見られなくて、日本にない漢字やハングルが書かれた浮きなんかが多かったが、ときおり変わったものもあった。
ビーチグラスはもちろん古い陶器の破片や変な形の魚の骨とかルアーとか、あと流木は俺は興味なかったんだが、大きいのを家に持って帰ると、当時まだ生きてたじいさんが皮をはいで磨きあげ置物にした。
中学校の仲間や小学生でもやってるやつがいたんで、そいつらより先にと思って、朝の6時頃には浜にいて見て回ったりもした
11月頃だったと思う。
海が荒れた翌日で何か収穫があるかと浜に出てみたらテトラポットの隙間に何か赤茶色の大きなものが引っかかってるのが見えた。
近づいていくと何かの像のようなもので自分の背丈よりも大きく見えた。
顔のほうを下に沈めて背中が出てるんだけど、お寺で見る仏像とはまったく違って頭が大きくいびつな形をしてる木目が出ているとこがあるんで木彫りだと思った。
一人ではどうにもできないので家に戻ってじいさんを呼んできた。
じいさんも始めて見るらしく、首をひねりながら人を集めて引き上げてみると言った。
俺はもう学校にいく時間になってたんで家に戻った。
・・・どうなったか気にしながら学校から帰るとじいさんが待ってて、像を引き上げて町の神社脇のおみこしなんかをしまってる倉庫にとりあえず入れた。
神主にも見せたけど何ともわからなくて、県都の大学の先生に連絡した。
気になるだろうから今から見にいってみないかと言った。
じいさんと連れだって行ってみると倉庫の鍵は開いてて、おみこしや消防団のポンプ車がある奥に今朝の像が立てかけてあった。
像は貝や海藻なんかをこすりとってきれいになっていたがあらためて見るとやっぱり奇妙な形をしてる。
頭が大きいと思ったのは兜でのたくったような飾りがついててその下には目が落ちくぼんで長い顔がある。
日本のものではないのかもしれないと思った。
胴の真ん中あたりがぐるりと何かでこすれたようにささくれだっている。
すごいものを見つけたのかもしれないと思ってちょっとワクワクした。
その夜、像を置いた倉庫から道をはさんだ向かいの家が火事になった。
せまい町なので消防車が走れば町の人はみんな外に出てくる。
気づくのが早かったせいか火事はボヤ程度で済んだけれど原因は不明。
検証では外から火が広がっているとのことだったので、放火が疑われてるという話だった。
たまたま消防ポンプにも貯水池にも近かったんで他に延焼はなかった。
数日後に火事を出した家の奥さんと高校の同期だった母親が奇妙な話を聞いてきた。
火事になった夜に洗濯物を居間に干していると、コツコツと縁側のガラス戸を叩く音がする。
何かと思って見にいってみると、暗闇の中からぬっと顔が出てきてサッシに外からはりついた
顔は日本人には見えず、両目はぜんぶ白目だった。
その時に北国の厚いサッシごしなのに「さむい、さむい」という声が聞こえてきたそうだ。
あっと驚いて後ろに倒れたときに、車庫の前から火の手が上がってるのが見え、なんとか叫び声をあげて家人を呼び、119番通報をした。
消防にこの話をしたら、放火犯かもしれないからと警察もまじえていろいろ聞かれたそうだ。
ただ奥さんは母親に、あれはぜったい生きた人間じゃなかったと強調してたという。
それから数日して、初雪が降った日の夜に変な夢を見た。
腹のあたりがすごく痛くて、下を見るとぐるぐる縄で柱か何かに縛られていて身動きがとれない。
疾走感があって潮風が風にあたるんで前を見ると荒れた海がある。
船の舳先に縛りつけられているんだとわかった。
両手は縛られていないんだけど、神社でおがむように手を合わせた形になってて動かせない。
なんとかてのひらを話そうともがいているうちにも波がどんどん通り過ぎていく。
背後で「ジーサイ、ジーサイ」と何人か叫んでいる太い声が聞こえる。
かなりの時間あばれていた気がするが、やっと手のひらがはずれげその拍子に目が覚めたと思った。
目を開けるとすぐ前に顔があった。
小さい電球しかつけてないのにはっきりと見えた。
顔はつるっとした坊主頭でぬれていて、大きな目はどっちも白目。
片方がぷちゅっとはじけて中から船虫が這い出してきた。
顔はだんだん下がって俺の肩のあたりにきて耳もとに口をちかずけて「・・・さむい、さむい」と言った。
そのときサイレンの音がして今度は本当に目が覚めた。
部屋を見回しても何もいなかった夜中の3時過ぎだった。
自分の部屋から下に降りると、家族も起き出してきてた。
俺はさっきの夢の話をするまもなく、防寒をしていっしょに外に出た。
この前のボヤのときより騒然としていて、そうとう大事のような感じがした。
家族と気配がするほうに歩いて行くと通りにはぞろぞろ人が出ていて火事は神社だということを聞いた。
人の流れについていったら、高く煙が上がってるようだ。
さらに近づいたら火がちらっと見えたが、それ以上は規制されていて進めなかった。
後日わかったところでは神社は全焼。
それからあの像を置いていた倉庫にも燃え移り、近くの家にも被害があったが幸いなことに死傷者はなかった
倉庫は完全に焼けていてあの像も燃えてなくなってしまったのだと思う。
今回も放火の疑いが強いということで長い間捜査があったらしいけどいまだに犯人は捕まってないんだ。
中学校の仲間や小学生でもやってるやつがいたんで、そいつらより先にと思って、朝の6時頃には浜にいて見て回ったりもした
11月頃だったと思う。
海が荒れた翌日で何か収穫があるかと浜に出てみたらテトラポットの隙間に何か赤茶色の大きなものが引っかかってるのが見えた。
近づいていくと何かの像のようなもので自分の背丈よりも大きく見えた。
顔のほうを下に沈めて背中が出てるんだけど、お寺で見る仏像とはまったく違って頭が大きくいびつな形をしてる木目が出ているとこがあるんで木彫りだと思った。
一人ではどうにもできないので家に戻ってじいさんを呼んできた。
じいさんも始めて見るらしく、首をひねりながら人を集めて引き上げてみると言った。
俺はもう学校にいく時間になってたんで家に戻った。
・・・どうなったか気にしながら学校から帰るとじいさんが待ってて、像を引き上げて町の神社脇のおみこしなんかをしまってる倉庫にとりあえず入れた。
神主にも見せたけど何ともわからなくて、県都の大学の先生に連絡した。
気になるだろうから今から見にいってみないかと言った。
じいさんと連れだって行ってみると倉庫の鍵は開いてて、おみこしや消防団のポンプ車がある奥に今朝の像が立てかけてあった。
像は貝や海藻なんかをこすりとってきれいになっていたがあらためて見るとやっぱり奇妙な形をしてる。
頭が大きいと思ったのは兜でのたくったような飾りがついててその下には目が落ちくぼんで長い顔がある。
日本のものではないのかもしれないと思った。
胴の真ん中あたりがぐるりと何かでこすれたようにささくれだっている。
すごいものを見つけたのかもしれないと思ってちょっとワクワクした。
その夜、像を置いた倉庫から道をはさんだ向かいの家が火事になった。
せまい町なので消防車が走れば町の人はみんな外に出てくる。
気づくのが早かったせいか火事はボヤ程度で済んだけれど原因は不明。
検証では外から火が広がっているとのことだったので、放火が疑われてるという話だった。
たまたま消防ポンプにも貯水池にも近かったんで他に延焼はなかった。
数日後に火事を出した家の奥さんと高校の同期だった母親が奇妙な話を聞いてきた。
火事になった夜に洗濯物を居間に干していると、コツコツと縁側のガラス戸を叩く音がする。
何かと思って見にいってみると、暗闇の中からぬっと顔が出てきてサッシに外からはりついた
顔は日本人には見えず、両目はぜんぶ白目だった。
その時に北国の厚いサッシごしなのに「さむい、さむい」という声が聞こえてきたそうだ。
あっと驚いて後ろに倒れたときに、車庫の前から火の手が上がってるのが見え、なんとか叫び声をあげて家人を呼び、119番通報をした。
消防にこの話をしたら、放火犯かもしれないからと警察もまじえていろいろ聞かれたそうだ。
ただ奥さんは母親に、あれはぜったい生きた人間じゃなかったと強調してたという。
それから数日して、初雪が降った日の夜に変な夢を見た。
腹のあたりがすごく痛くて、下を見るとぐるぐる縄で柱か何かに縛られていて身動きがとれない。
疾走感があって潮風が風にあたるんで前を見ると荒れた海がある。
船の舳先に縛りつけられているんだとわかった。
両手は縛られていないんだけど、神社でおがむように手を合わせた形になってて動かせない。
なんとかてのひらを話そうともがいているうちにも波がどんどん通り過ぎていく。
背後で「ジーサイ、ジーサイ」と何人か叫んでいる太い声が聞こえる。
かなりの時間あばれていた気がするが、やっと手のひらがはずれげその拍子に目が覚めたと思った。
目を開けるとすぐ前に顔があった。
小さい電球しかつけてないのにはっきりと見えた。
顔はつるっとした坊主頭でぬれていて、大きな目はどっちも白目。
片方がぷちゅっとはじけて中から船虫が這い出してきた。
顔はだんだん下がって俺の肩のあたりにきて耳もとに口をちかずけて「・・・さむい、さむい」と言った。
そのときサイレンの音がして今度は本当に目が覚めた。
部屋を見回しても何もいなかった夜中の3時過ぎだった。
自分の部屋から下に降りると、家族も起き出してきてた。
俺はさっきの夢の話をするまもなく、防寒をしていっしょに外に出た。
この前のボヤのときより騒然としていて、そうとう大事のような感じがした。
家族と気配がするほうに歩いて行くと通りにはぞろぞろ人が出ていて火事は神社だということを聞いた。
人の流れについていったら、高く煙が上がってるようだ。
さらに近づいたら火がちらっと見えたが、それ以上は規制されていて進めなかった。
後日わかったところでは神社は全焼。
それからあの像を置いていた倉庫にも燃え移り、近くの家にも被害があったが幸いなことに死傷者はなかった
倉庫は完全に焼けていてあの像も燃えてなくなってしまったのだと思う。
今回も放火の疑いが強いということで長い間捜査があったらしいけどいまだに犯人は捕まってないんだ。
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