ある日A君たちは肝試しをしようと墓場に集まった。

ルールは、墓場の端の大きな木の下に置いてある小石を取って来るということと、無事に取ってこれた奴には取って来れなかった奴が1000円払うということだけだ。

A君たちが肝試しの順番をゴソゴソと話し合っていたら、子供を背に背負った女の人が現れた。
A君はその女の人を知っている。

子供を生んですぐに夫と両親を無くし、仕事も掴めずに貧乏暮らしをしている可哀相な人らしい。

「石取ってきたらお金くれるの?」

女の人は話を聞いていたのかそう言った。

A君たちは女の人の事情をよく知っていたので、思わず「はい、そうです」と答えた。

女の人は一番初めに石を取りに行った。
子供のはした金でも貧乏な女の人にとっては貴重な金なのだ。
けれど墓場の闇は深く、濃い。

女の人は恐怖心でいっぱいで、闇の中で死んだ夫を思い出して泣きそうになった。
すると弱った女の人の心につけこんだのか魔物が後ろから女の人の髪をひっぱりはじめた。

「キャアアアア!!」

女の人は恐怖で泣きながら暴れた。
怖くて怖くて仕方がなかった。
何分間抵抗しただろうか。

魔物は女の人の背からやっと離れてずるりと地面に転がった。
暗闇ではおそらく恐ろしい姿をしているであろう魔物の醜い姿も見えない。
それでも魔物が暴れているのは見えた。

女の人は魔物を何度か蹴り、石を投げ、魔物の動きが止まるまで攻撃を続けた。
そしてようやく魔物の動きが止まるとまた歩みを戻して木の下へ行き、石を持ちA君たちの元へ向かった。

女「取ってきたわ」

女の人は石を取ってきた成就感と魔物を倒した悦びでいくからか顔を蒸気させながら言った。

A君たちは女の人にお金を出そうと財布の中をさぐりながらふと気づいた。

「あれ?赤ちゃんは?」

女の人はハッとした。

さっき髪を引っ張ったのは、私が蹴って石を投げて殺したのは・・・。