同僚の話。
彼は実家の裏山で、不気味な物を見たことがあるという。
家族が副業で佃煮を作っているので、その手伝いで山菜獲りをしていた時。
ついうっかり、普段足を踏み入れないような奥にまで入ってしまった。
引き返そうかと考えていた彼の耳に、奇妙な低い音が聞こえた。
ふしゅーじゅしゅー
彼は実家の裏山で、不気味な物を見たことがあるという。
家族が副業で佃煮を作っているので、その手伝いで山菜獲りをしていた時。
ついうっかり、普段足を踏み入れないような奥にまで入ってしまった。
引き返そうかと考えていた彼の耳に、奇妙な低い音が聞こえた。
ふしゅーじゅしゅー
どうやら大きな動物の鼾のよう。
何だ何だ?と思い見回すと、視界の外れ、大きな黒い石の脇にそれがいた。
最初は羊歯の下で、黒タイヤが山を成しているのかと思った。
違った。
タイヤの表面が波打っている。
息をしている。
かなりの大きさの生き物が、そこで蹲って寝ていたのだ。
高さは彼の膝ほどもある。
起き上がると一体どれほどあるのか。
体表面に何個も突き出しているのは、逆刺であろうか。
一回深呼吸をして息を整えると、できるだけ足音を潜めて、一目散に下山した。
幸いにも、それが目を覚ますことはなかったようだ。
家に帰ってから、祖父に奥山で見たことを話してみた。
お祖父さんは鋭い目で彼を見返すと「そりゃアナマドイだろう」と言った。
同僚「蛇だよ。いや蛇だったと言うべきか」
俗に穴惑いとは、秋の彼岸を過ぎたのに、冬眠をせず穴にもこもらない蛇のことを言うらしい。
俳句では秋の季語にもなっている。
穴蝮と呼ぶ地方もあるようだ。
確かに言われてみれば、どこか蛇のような雰囲気も感じられた。
しかし、あの姿形や大きさはどうしたことか。
彼がそう不思議そうに呟くと、「蛇であることを辞めたモノは、まともな蛇の姿では居られんのだろうよ」と。
お祖父さんはそう言ってから「哀れなことだの」と、ポツリ付け加えた。
冬眠することを自ら止めた蛇は、一体何になるのだろうか。
何だ何だ?と思い見回すと、視界の外れ、大きな黒い石の脇にそれがいた。
最初は羊歯の下で、黒タイヤが山を成しているのかと思った。
違った。
タイヤの表面が波打っている。
息をしている。
かなりの大きさの生き物が、そこで蹲って寝ていたのだ。
高さは彼の膝ほどもある。
起き上がると一体どれほどあるのか。
体表面に何個も突き出しているのは、逆刺であろうか。
一回深呼吸をして息を整えると、できるだけ足音を潜めて、一目散に下山した。
幸いにも、それが目を覚ますことはなかったようだ。
家に帰ってから、祖父に奥山で見たことを話してみた。
お祖父さんは鋭い目で彼を見返すと「そりゃアナマドイだろう」と言った。
同僚「蛇だよ。いや蛇だったと言うべきか」
俗に穴惑いとは、秋の彼岸を過ぎたのに、冬眠をせず穴にもこもらない蛇のことを言うらしい。
俳句では秋の季語にもなっている。
穴蝮と呼ぶ地方もあるようだ。
確かに言われてみれば、どこか蛇のような雰囲気も感じられた。
しかし、あの姿形や大きさはどうしたことか。
彼がそう不思議そうに呟くと、「蛇であることを辞めたモノは、まともな蛇の姿では居られんのだろうよ」と。
お祖父さんはそう言ってから「哀れなことだの」と、ポツリ付け加えた。
冬眠することを自ら止めた蛇は、一体何になるのだろうか。
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