知り合いの話。

林間学校の夕食後のこと。
食器を川砂で洗っていると、ズズッズズッという音がどこからか聞こえてきた。
砂の上で重い物を引きずっているような音だ。

何だ?

顔を上げて初めて、いつの間にか一人きりになっていたことに気がつく。
途端に心細くなり、暗くなりかけた河原から急いで引き上げようとしたその時。
いきなりそいつが目の前に現れた。

上流側の藪を割って出てきたのは初見、灰色の人間に見えた。
ズズッと足を引きずって前に出る度、砂がパラパラとこぼれて落ちる。
砂塗れになった人かと思ったが、どこにも肌は覗いておらず、まるで人型の空間に砂がみっしりと詰まっているかのような感じを受けた。

彼に数歩近づいた所で、そいつは躓いて前のめりに倒れた。
ドサッという音を立てると、あっという間に崩れてただの砂になる。
慌てて宿営地に戻り大声で訴えたが、誰も相手にしてくれない。

翌日、仲間を連れて河原に向かったが、小さな砂山が残っているだけだった。