俺が昔田舎のとある旅館のフロントで働いてた時の話。

まだ建って2年程度、自分が努めて1年くらいの頃だったと思う。
自分が来た時には従業員の間では庭園や2階の廊下に『女の人の霊が出る!』とか、すでに噂にはなってたんだ。

自分は0感だからそんなのどこにでもある作り話程度に思ってました。

しかし、ある日たまたま玄関の前で自分の写真を撮ってもらい、出来た写真を見た時に自分の顔の横に火の玉が写っていました
なんとなくとかではなくほんとにファイヤーなボール、まさに火の玉でした。

火の玉過ぎて霊的な感じはせず怖くはなかったのですが、いつのまにかその写真は行方不明になってました。
親に見せたから、もしかしたらこっそり親が何かしたのかも知れません。

で、その写真を撮った数ヵ月後のことです。
お客さんのチェックアウトが済んでお風呂の掃除を終えた自分は、昼休みで少し寝ることにしました。

旅館には地下があり、冷蔵庫や従業員食堂、更衣室があるのですが、自分は誰も来なくて静かな男子更衣室で真っ暗にして眠ってました。

少し寝てると何か異変を感じて目が覚めたのですが、なんだか空気が重い。
高いところに行って気圧が変わる感じというか、全身を全方向から押される感じがしました。

やばい!これは起きないと!

そう思い自分の状態を認識したのですが、意識ははっきりしていて明らかに起きていました。
ですが、体は全く動きません・・・。

そして仰向けに寝ていた俺は自分の足元がうっすら緑色っぽく光っていることに気がつきました。

あ、これは本気でやばい!

そう思いました

緑色はどんどん濃くなり広がっていき、その中に男の腰から上の姿が浮かんできました。
さらに濃くなり男の姿もはっきりと見えました。

白い着物に落ちたマゲ髪、まるで死刑になる間際の落武者でした。
“それ”はもの凄い恨みの形相でこちらを睨んでいました・・・。

生きている者ではない、同じ世界のものではないのはわかりました。

このままでは殺される!?と本気で思った俺は、泣きそうになりながら足元の落武者を必死で蹴りました。

体はもう動きました。

しかし、当たり前のように蹴りは落武者をすり抜け何度も空振りしました。
パニクって何度も蹴った後、改めて体が動くことに気がついた俺は、勇気を出して起き上がり部屋の電気をつけ更衣室の扉を開けました。

そこに行くには自分の足側、まさに落武者を通り抜けないといけないのですが、殺されるよりましなので必死で動きました。

そして更衣室を出て電気がついて明るくなった部屋を振り返ったのですが、もう落武者はいませんでした。

その後フロントまで走って戻り、すぐに先輩にそのことを話しました。

俺はその後は何もなかったのですが、1、2ヶ月後に今度は料理人がやはり地下で何かを見たらしく、お祓いの人が来ていました。

そらから半年程度で俺は旅館を辞めたのですが、今はその旅館は閉業し営業してません。
建物は今もまだそのまま残っているみたいです。

当時は何度もテレビの撮影、有名人が来ていて、そこそこ名の知れた旅館でした。