俺の友達の斎藤の話。
自称見える人。

俺自信は幽霊の存在は否定も肯定も出来ない立場。
幽霊なんか見たことないけど、そんなこと言ったら俺がまだ実物を見たことない物なんてこの世にいっぱいあるし。
だから友達の話す霊体験・目撃談についてはウソだともホントだとも思わなかった。
けど、妙に初対面の人の過去やら未来の出来事を言い当てたりする奴だったことは確か。
それが霊感なのか別の能力なのか、はたまた偶然なのか俺には分からん。

そんな斎藤が一人暮らしを始めた。
5階建てのワンルームマンションの一室。
武士の霊が出るらしい・・・。

夜中に「ガシャガシャ」と鎧の音がして目を覚ますと、鬼の形相の武士が玄関の扉のやや上方(なぜかそこには在るはずのないお札が貼ってある)を弓で射る。

朝になって確かめると、弓矢はもちろんお札もない。
そんなことが毎晩続いて、さすがにウザくなってきたらしい。

元来斎藤は怖がりなので、今までは霊に遭遇しても極力無視の方向で済ませてきたのだが、自分の住む場所に出るという状況になったら話は違う。
腹をくくって武士と対話する決意をした。

ペプシコーラとたけのこの里を二人分用意して、武士が出現するのを待ち構えた。

俺「普通そういうのって日本酒とかお団子とかの方が良いんじゃないの?」

訊いてみた。

斎藤「昔の人が食べたことない物のほうが物珍しくて喜ぶかもしれないし・・・」

・・・という根拠とのこと。

まあそれで交渉というか斎藤の希望を伝えたらしい。

怖いから弓を射るのは斎藤が不在の時だけにして欲しいこと、やって欲しいことがあれば出来る範囲で協力する事等を訴えた。
武士は特に分かったとも嫌だとも言わなかったらしいけど、翌晩からは出てこなくなった。

今まで避けていた霊とのコミュニケーションが取れたことに嬉しくなった斎藤。
ちょくちょく「食べていいよ」の置き手紙と共にお供え物(ピザやらポテチ等)をするようになった。
ネットの使い方も教えたらしい。
教えたと言うか、中空に向かってやり方を説明しながらエ◯サイト巡りしたりGoogleで適当に検索してみたり、というだけのことらしいけど。

お供え物とネットに関しては俺も体験した。
お供え物を置いて斎藤と一緒に外出し、何時間か後に帰宅すると、ポテチが減ってる。
外出前に確認したブラウザの履歴(エ◯系ではなくなぜか動物関連のサイト)が増えてる。(これに関しては協力者がいれば再現出来ることだけど、真実は不明)

最近は斎藤も図々しくなって、お供え物の置き手紙にお願いを書くようになった。

「液晶テレビが欲しい」と書いて懸賞応募。
アクオス当てやがった。

「◯◯ちゃんと仲良くなりたい」と書けば、◯◯ちゃんは彼氏と別れて斎藤といい感じに。(テレビも◯◯ちゃんも偶然かもしれんけど、これで俺もちょっと信じかけてる)

夏になったらサマージャンボお願いする気らしい。
武士からメッセージとかお告げみたいなものはないらしいので、競馬やロトなんかは断念。

もし宝くじ当てやがったら俺も霊の存在を完全に信じてしまうと思う。
けど、いつか斎藤にはバチがあたるような気がする。