妻の友人に聞いた話。

山の墓地で草むしりをしている最中、ふと顔を上げると子供がいた。
墓石の裏から顔を半分のぞかせて、こっちをジッと見つめている。
お墓で遊んじゃダメよと声をかけようとして気がついた。
その墓石は、切り立った斜面に密着するように建っていて、裏に人の立ち入る隙間などない。

首を伸ばし、少し角度を変えて覗き込むと、子供の顔は、墓石の中に引き込まれるようにスーッと消えた。

不思議に怖いという感情はなく、なぜか不憫に思えたので、その墓に小さな花を供え、静かに手を合わせた。

家に帰ってから作業用のズボンを脱ぐ際、ポケットにクレヨンが1本入っているのに気がついた。