私が小学校2年生の時のことです。
クラスにSちゃんというタロット占いが得意な子がいました。

タロットなんてシャレた物が物珍しかったことと、よく当たるだとかで、たちまちSちゃんはクラスの人気者になり、その人気は他のクラスや他の学年にも飛び火していました。

クラス中が彼女からアドバイスを貰いたがって、なんだか卑弥呼とその信者みたいな感じになった。
それに気を良くしたのか、Sちゃんはそのうち「私、霊が見える」と自称し始めました。

もともと気が強めの子だったのですが、エスカレートして仕舞には「それ、良くないものがついてるかも・・・手放した方が良いよ」と、他の子が持っている可愛い文房具やアクセサリーを脅し取るようなこともしていました。
みんな「Sちゃんが言うなら・・・」と信じ切っていたので、断る子は居なかったように思います。(因みにこの行為はさすがに先生から怒られたらしくしばらくしたらやらなくなっていました。でも見えないところでやっていたかもしれません)

私はなんだか彼女とクラスメイトの異様な信仰?が怖くて、あまり関わろうとしませんでした。
しかし、それがSちゃんは気にいらなかったようで、私のことを「あの子呪われてる、悪魔がついてる」とみんなに言いふらしたのです。

彼女的には、これで私が自分のことを頼ってくると思っていたのでしょう。
実際、「どうしてもって言うんなら祓ってやってもいい」というようなことを言われました。

でも私はSちゃんを頼りませんでした。
妙なプライドがあったのだと思います。

それからクラスメイトに明らかに避けられるようになり、私は孤立してしまいました。
私と同じくSちゃんブームを気味悪がって、でも仲間はずれは嫌なので上辺だけ合わせていた子も何人かいて、その子達がこっそり手紙をくれたりしたので、なんとか学校には通っていました。
それでも辛い毎日が続きました・・・。

当時、帰宅した私が真っ先にやることといえば、去年死んだノコギリクワガタのクワちゃんのお墓参りでした。
水をかけたり、たまにお線香をあげたり・・・。
子供の知識の範囲内程度のものでしたが、欠かさずやっていました。

他にも色々飼育していましたが、お墓を建ててお参りまでしたのはクワちゃんだけです。
よほど気に入っていたのだと思います。

ある日、とうとう学校でのことに耐えきれなくなって、お参りをしながら泣いてしまいました。

その翌日のことです。
帰宅すると、お墓のある花壇の真向かいに布団を置いたり、腰かけたりできる木製の台があって、そこに見知らぬお姉さんが座っていました。

緩くパーマのかかったおさげと、とても優しそうな雰囲気だけは今でもはっきり覚えています。

家の庭に見知らぬ人が座っていると普段なら警戒するところですが、不思議とそんな気持ちにはならず、お姉さんの膝にすがりついて、学校で悔しい思いをしたことを泣きじゃくりながら話しました。
確かその間ずっと頭や背中を撫でてくれていた記憶があります。

泣き疲れて寝てしまったのでしょう・・・。
気付くと晩御飯前の時間で台の上で寝ているところを祖母に起こされました。
言ってはいけないような気がして、お姉さんの話は家族の誰にも言いませんでした。

次の日、Sちゃんは突然学校を休みました。
私は心底ほっとしました。
Sちゃんの監視の目、と言ったらいいのでしょうか、それがなければこっそり話しかけてくれる子もいたので、久々に友達と話せて嬉しかったのを覚えています。

Sちゃんは1日学校を休んだだけで、その次の日には元気そうに登校して来ました。
でも、休む前とは明らかに違う部分がありました。

クラスメイトがいつものように占いを頼むと、怒り混じりで「その話はもうしないで!」と言うのです。
理由は話してくれませんでしたが、それ以来Sちゃんは占いや霊の話題を振ると、全力で「その話題はやめろ!」と怒るようになり、Sちゃんブームはぱったり終わってしまいました。

彼女に何があったのかは分かりません。
でも確実に“何か”あったのです。

Sちゃんの変化を見て、私はすぐにあのお姉さんがクワちゃんで私を助けてくれたのだと思いました。
今でもそう信じています。

木製のお墓は雨ざらしだったこともあり、いつの間にか無くなってしまい、私もいつしかお墓参りをしなくなって、クワちゃんのこともこの体験もすっかり忘れていました。

昨日、近所の子供が虫取りで捕まえたと、ノコギリクワガタを見せてくれた時、ぶわっと記憶が蘇ったので、こちらに投稿させて頂いた次第です。
予想以上に長くなってしまい申し訳ありませんでした。