6年くらい前、妙義山にひとりで登ったことがある。

ふもとの神社の桜がきれいと聞いて、見に行ったんだ。
以前家族でも登ったことがあったし、軽い気持ちで途中まで行ったのね。

いくつかの鎖場を越えて、いちおう区切りのいい場所まで出たから満足して、さあ下りようと思って歩き出した。

もともと登山道としても舗装や整備がされてるわけじゃなく、いくつか目印があるとはいえ、先人の歩いた跡を辿って登るような道だったため、20分くらい歩いて道に迷った。

ほかに登りに来ていた人もなく、熊がと言われていたのですごく不安になり、しばらく立ちすくんでしまった。

実際には5分くらいだったと思う。

頭上から突然、「ちりんちりん」と熊よけの鈴みたいな音が聞こえてきた。

ああ誰かいるんだ!これで帰れる!

そう思って、急いでその音の方向に向かって歩き出した。
すると3分も行かないうちに、登山道の目印が見えたんだ。

精一杯急いで下りたんだけど、山から下りてきたひとの姿はなかった。
もしかしたら登ってく人だったのかもしれないけど、迷ったとき夕方4時を過ぎてたんだよね。

これからどんどん暗くなるし寒くなるし、行った先には山小屋とかもないのに・・・。
怖かったので、自分の中で山の神様に道案内されたってことにしてる。