俺の母ちゃんが言うには、俺は小さい頃、いわゆる霊感少年だったらしい。

旅行先なんかで、あらぬ方向を見つめ、「兵隊さんがいるよ」だの、「黒い人がいるよ」と言い、何もない場所に語りかけたり、何かを追って勝手に走り出したり、手に負えない子だったとか。
なかでも、死の予言には辟易したらしく、「あの人はもういなくなるよ」とか、「あの人はすぐ死ぬよ」と知人や通りがかりの人問わず、突然発言し、解っているだけで、親しい人三人の死を的中させたらしい。

そんな俺の発言に若干病んでいた母ちゃんは、「そんなに言うなら私の寿命も当ててみい!」と俺に言ったとか。

俺はしばらく考え込み、「◯年◯月◯日◯時に死ぬよ」と淡々と告げたらしい。

母ちゃんは、まさかそんなに具体的な日時が上がるとは思ってもおらず、ショックを受けたとか。

だが、俺が小学校に上がる頃からじょじょにそのような怪しい発言はなくなっていったらしい。
今の俺はそんな話は一切覚えていない。
高校時代に初めてその話を聞かされた。

母ちゃんに関する件の日時はまだ訪れていないが、俺はその日が近づいているのかと思い出すたびに鳥肌が立つ。

「あんたの不吉な予想は外れたことがない。私はその日に死ぬと覚悟してるよ」

母ちゃんはそう公言しており、すでに親類の葬儀屋にも具体的に話を通しているらしい。

俺は「そんな話があるわけがない」と思っているが、実のところは本当に悩んでいる。
ガキの頃の俺が語ったとかいう予言を、これまで母ちゃんがどういう気持ちで受け止めていたのか・・・。

本当になるのかどうかわからんが、それができるうちに親孝行はしておこうと本当に思うよ。