中学から続けていた陸上。
スポーツ推薦で入学した大学だった。
ワンルームを借りて、念願の一人暮らしをはじめた。

引っ越しの日、なぜか水が出なくて困った。
しかし、翌日には業者が来て直してくれた。

それから数週間あと、寝てる間に携帯が鳴り、出た途端に通話が切れる――ということがあった。

その着信は不通知だった。
それは何日も続いた。
なので無視するようにすると、もうかかって来なくなった。
そんなことはすぐに忘れて、その後一ヶ月くらいは何もなかった。

大学では多くの友人ができ、陸上もいい成績がでたりして、何もかも順調だった。
でもある日、大学から帰ると、部屋の真ん中に置いていたテーブルが逆さにひっくり返っていた。

もちろん鍵は毎日かけて出ているし、その日も鍵は確かにかかっていた。
気味が悪かったが、実質、被害も無いので、どうしたものかと悩んでいた。

大家と相談し、鍵の交換を求めたが、結局は自分の金で交換することになってしまった。

無事に交換が済んだその次の日、朝起きると、部屋の窓が全開になっていた。
寒くないとはいえ、夏はまだ先だ。
まさか開けたまま寝るなんてことはない。

なにか嫌な予感がした。
すぐに窓を閉めた。
すると、バァーンっとすごい音がして、クローゼットのドアが勢いよく開いた。

心臓が止まるかと思った。

近づいて中を覗く。
すると、そこには大量の白髪が落ちていた。
それを見て、吐きそうになった。
気持ち悪いので、割り箸でつかんで捨てようとする。

そのとき気がついた。
その長い白髪は、つながった一本の白髪だった。

霊など信じていなかったが、そうとでも思わないと説明がつかなかった。

その日、神社で御札を買って帰った。
玄関と部屋にそれぞれ張った。
御札の効果を期待して、その日は早めに眠った。

翌日目を覚ますと、枕元に包丁が刺さっていた。
おもわず声をあげてしまった。

部屋を見渡すと、ナイフやカッター、箸、フォークなどが、自分のかばんや服に刺さりまくっていた。
そして、お気に入りの靴が、なにかでズタズタにされていた。
とても履ける状態ではない。

あの御札はどこかに消えていた。

もうイヤだ。
すぐに部屋を引っ越すことにした。

次の部屋が決まるまでは友人のところで世話になった。
そして新しい部屋も決まり、引っ越しも完了した。

これで大丈夫だろう。
あんな思いは二度とゴメンだ。

実際、引っ越してからはおかしな現象は起こっていない。

強いて言えば、最近、陸上でタイムが悪い。
フォームの乱れをよく指摘される。
自分ではそんなことないと思うのに。

こんな呪い?ってあるのか?
やはりお祓いを受けたほうがいいのだろうか?