俺の本家では、嫁が子を孕んだら戌の日から臨月まで、嫁の親族の内で出産してない女性に滞在して貰ってもてなす・・・と言う風習がある。
昔は1人をだったらしいが、今は数人をかわりばんこに呼んでる。
本家嫁の親族の力で、嫁と子供を護ってもらう意味がある。
呼んだ人が気持ちよく滞在して、嫁と子の無事の出産を気にかけてくれるほど護られると言われている。

こんなことをするのは訳がある。
恥ずかしい話だが、十数代前の先祖の呪いのせいだそうだ。

俺の本家は昔、藩に仕える武家だったそうだ。
身分はかなり低かったらしい。

呪っている先祖をAとする。
Aにはライバルとも言える幼馴染みのBがいた。
勉学でも武芸でも競いあっていて、仲も良かったそうだ。

ある時、傍流の若君が生まれることになった。
その守り役の1人に、AかBが付くことになった。
決める時は、御前試合みたいなことをしたらしい。

試合ではAが勝った。
でも選ばれたのはBだった。

若君は、生まれた時から将来出家するのが決められていたそうだ。
城下とは離れた場所に大殿の隠居所があり、Bも城下から離れていった。

Bは主に畑仕事をしてた、と言われている。
それほど身分が低かったんだろう。

それでも若君が無事出家すると、守り役も全員寺行きになった。
Bの家は、Bの妹が継ぐぐことになった。
婿はAの家から貰った。
それからも数代毎に、婚姻してたそうだよ。

B家では、A家から婿取りをすることが多かったそうだ。
でもある時、Aの男子がいなくなってしまう。
その時に、B家から養子を貰った。
それで家を存続した。

結果、Aが自分の家を呪うようになった・・・。
負けたBの家系に家を乗っ取られたのが悔しいんだとさ。

呪うっても家が絶えることは怖いようで、流産しやすくなるとか、虚弱で生まれるとかだが・・・。
呪われてる方としてはたまったもんじゃない。

呪いから解放されるために、色々試したけど効果無い・・・。
伝手を頼って高名な神職に教えて貰ったのが、『嫁の実家の力を借りる事』だったそうだ。
呪ってる方は、家が絶えるのが怖いって弱みがある。
だから嫁の実家の若い女のはち切れんばかりの精気と「無事に子供が生まれると良いね」ってパワーを側に置いておくと、圧倒されて手が出せないんだとさ

なので、俺の一族では本家との婚姻は御法度です(親族だと嫁の実家パワーが使えないので)それでもどうしてもってんで結婚した人もいたらしいが、やっぱり子供が虚弱とか早死にだったそうだ。

本家に祟ってるAも本家以外はどうでも良いらしく、他の家ではそんな事無いんだけどね。
でも、Aが守り役に選ばれていればそのまま寺男として一種過ごしたわけで・・・そっちの方が良かったのかねぇ?