私の体験した話ですが、怖くないかもしれません。
でも今でも頭に引っかかっていることなので、投稿させていただきます。

これは私が中学の時の話。
今は建て直して違うのですが、当時歯磨きをしていると目の前にある鏡(大きめの丸い手鏡)を立てかけていたので後ろにあるドアがちょうど見えました。

普段は気にしていないのですが、歯磨きの時間が重なったりお手洗い(当時は廊下を挟んで向かい側の部屋に仏間、そして隣がトイレ)に行く人がいたりすると時々鏡に人が写る。
けれどそれもあまり目に留めていませんでした。

それが、ある日のことです。

私はいつものように寝る前の歯磨きをしていました。
歯磨きが終り、確か口をゆすいでいた時でした。

ふと鏡を見ると、ピエロのぬいぐるみが浮かんでいました。
それは私の家にあったぬいぐるみで、オルゴールのついた音が鳴ると、首が回る、そんな愛らしいものでした。
また父が何かしていると、私は後ろを振り返りました。

ただ廊下だけが見えています。

何をからかっているんだと私は急いで居間に行きました。
その間の時間はほんの数秒でしょうが、そこには私以外の家族が揃って寛いでいました。

慌てた様子の私を怪訝に見ながら「どうしたの?」と尋ねます。

「いま、お父さんピエロ持っとらんかった?そこで」

「?」

「お父さんがなんでそんな事せないけんと」

もちろん、父はピエロのぬいぐるみなど持っていませんでした。
もし家族全員で私をからかおうとしていても、ピエロのぬいぐるみは仏間。
そして居間はその隣です。

仏間にぬいぐるみを置こうとすれば、どうしても廊下に飛び出した私とすれ違わないといけなくなります。

その時になって、私はようやくこの奇妙な事態に気づきました。

そしてその時になって気づきました。
私はピエロのぬいぐるみが浮いていると思って振り返りましたが、その時見えるべき『ぬいぐるみを持っている手』を見ていないのです。

その後、私はそのぬいぐるみがいつもの場所(仏間のタンスのガラスケース内)にあることを確認しました。

ごく普通の愛らしいピエロのぬいぐるみですが、このことがあってからは母に頼んで捨ててもらいました。

あれから家も変わって鏡もきちんとしたものですが、いまだに咄嗟に鏡を見るのが恐いです。