弁護士の木村晋介氏のエッセイ。
氏は昔(エッセイの執筆時点で十数年前)、国選弁護人としてある殺人事件を扱った。
わずか数千円の金を奪うために女性を絞殺した事件だった。
どうしてそんな少額のために人を殺したのか。
何度もいろいろな角度から尋ねたが当の本人が頭を抱えて「よくわからない」と繰り返すばかりだった。
ある面会日、捜査記録(関係者調書)のコピーを被告人に渡した。
それを読んだ彼は「母親の調書に書かれていることは本当ですか」と思い詰めた顔で尋ねてきた。
氏は昔(エッセイの執筆時点で十数年前)、国選弁護人としてある殺人事件を扱った。
わずか数千円の金を奪うために女性を絞殺した事件だった。
どうしてそんな少額のために人を殺したのか。
何度もいろいろな角度から尋ねたが当の本人が頭を抱えて「よくわからない」と繰り返すばかりだった。
ある面会日、捜査記録(関係者調書)のコピーを被告人に渡した。
それを読んだ彼は「母親の調書に書かれていることは本当ですか」と思い詰めた顔で尋ねてきた。
その調書に書かれていたのは、彼の父親は若いときにわずかの金欲しさに人を殺し、刑務所で死亡したと書かれていた。
「本当のことだと思うよ」と答えたところ彼はぶるぶると震え、泣き崩れた。
彼は、母親から「父親は若くして病気で死んだ」と聞かされていたという・・・。
早いうちに父親の真実を知らされていたら、彼の人生は変わったろうか、それとも
変わらなかっただろうか。
変わっても変わらなくても後味が悪いと思った。
「本当のことだと思うよ」と答えたところ彼はぶるぶると震え、泣き崩れた。
彼は、母親から「父親は若くして病気で死んだ」と聞かされていたという・・・。
早いうちに父親の真実を知らされていたら、彼の人生は変わったろうか、それとも
変わらなかっただろうか。
変わっても変わらなくても後味が悪いと思った。
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