遠戚の葬式で親戚のオジサンが話してくれた話です。

オジサンは得意先に向かう為に車で高速道路を走っていました。
インターを降り数キロ走ったところ、かなり狭い道に入り込んでしまい、何時の間にか前を走る車や後から来る車はおろか対向車も全くなく、暗く狭い曲がりくねった道を心細くなりながら延々走り続けたそうです。

どれだけ走ったでしょうか、突然道が開け、明かりが見え、街が目の前に現れ、ホッとしたそうです。
狭い町並みで右左に見える色々なお店や街行く人に気を付けながらゆっくりと走行していたところ、あることに気づいたそうです。
それは街行く人が何十年も前の服装で、街灯は明らかにガス灯で、ガソリンスタンドは給油機もレトロ、そして飲み屋の客引きの女性が大勢いて、髪型と服装が共に現代のものではいということでした。

オジサンは車の速度を上げましたが、時間だけがゆっくりとのんびり流れている感じで、その有様に心底恐怖を覚え、震える手で携帯電話を取り出して家に電話したそうです。

運転しながら携帯電話なんて絶対に掛けない真面目なオジサンがこういうことをするなんてよっぽどのことでしょう。

呼び出し音の後に「もしもし~っ」と、電話の向こうで聞きなれたオジサンの奥さんの声がしたそうです。
オジサンは今自分に起こっている現象を奥さんに伝えようと必死に話すのですが、途中で「ビイ~ッピロッピロッ」と圏外のような状態になり全く会話にならなかったそうです。

無意識に「ココから車外に出てはいけない!早くココを出なければ!」と強く念じ周りを見ず、以前万一の際の策として教わった般若心経を力一杯唱え、必死にアクセルを踏み続けたところ、どこをどう走ったのか通行車両のある広い道路に突然出、その後無事に得意先に着いたそうです。

問題は帰り道です。
また来た道路を通るのはどうしても嫌だったそうで(当然ですね)、ナビの自宅に戻るボタンを押し警戒しながら走行を始めるオジサンが来る時迷い込んだ道は全てなく、ナビの画面上には山の中に向かい先程来る時走った走行跡の点線が伸びていて愕然としたそうです。

その分岐点を見ましたが山で車はおろか歩くことも厳しい森だったとのことです。

自宅に帰り着き電話した時の様子を妻に聞いたところ、オジサンの声は全く聴こえず雑音だけで、奥さんは悪戯電話だと思い、切ったとのことでした。

埼玉県の某山中での話。