原子炉停止機能強化工事。
その性能検証試験中に、事故は発生した。

原子炉の上ぶたを全開放。
制御棒89本全てを原子炉の下部から挿入、全出力を停止・・・させたはずだった。

作業員は試験手順書に従い試験を行っていた。
しかし、その手順書には誤記があり、本来なら開いておくべき弁を閉じてしまっていた為、漏水により逃げ場を失った水圧が制御棒3本に集中した。
そして、とうとう3本の制御棒が脱落してしまった。

脱落した直後から中性子の量が増加。
異常発生の警報が鳴り響いた。

これは、核反応を停止させている筈の原子炉内で、核反応が発生し出したことを意味した。
つまり臨界である。

最悪の事態を避けるため、ついに原子炉緊急停止装置を作動させることを決断。
しかし、試験開始前の事前設定で、緊急停止装置は作動しないよう設定されてしまっていたのである。

遠隔操作による原子炉制御手段は全て失われた。
もはや事態を収拾させる手段は一つだけであった。
それは作業員の手作業による弁の開け閉めである。

数名の作業員たちが緊急招集された。
弁の開け閉めをする為に、果敢にも炉心へ向かう彼等の運命や如何に。

時、1999年6月18日午前2時すぎ石川県北陸電力志賀原子力発電所1号機内。

※この話は現実にあった話である。