夏が近づくと毎年思い出すんだけど、小1の時に片腕ほどの大きさのバッタを見たことがある。

当時は畑と山しかないような田舎に住んでいて、子供たちの遊び場といえば近所の空き地しかなかった。

そこは学校のグラウンドのように砂地が整備されていた。
空き地の横はちょっとした崖になっていて、木製の柵が空き地を囲むように立っていた。

そのバッタを見たのは夏の夕暮れ時だった。
友達と空き地で遊んでいた俺は、みんなが「ご飯だから」と帰ってからも、なんとなく帰りたくなくて、柵に肘をついてぼんやり空を眺めていた。

空が紺や青や緑やオレンジに染まって、入道雲が真っ赤にそびえていて本当に綺麗だったのを覚えている。

キキキ・・・リリリ・・・チチチ・・・グエッグエッ

あらゆる虫や生き物の声、さわさわという草の音、蒸れた腐葉土の匂いに包まれていると、ふと気配がした。
横を見ると、少し先の柵に巨大なバッタがぼてっと乗っかっていた。

バッタは、おなかを膨らませたり縮ませたりしながら、前脚を口元でもぞもぞとさせていた。

オレンジの空を背景にシルエットのように見えるバッタが、なんだか神々しく見えた。

興奮を抑えながらじっと見ていたら、カチカチカチッ!と音を立てて飛び立っていったが、ずいぶんと重たそうで、飛ぶというよりは崖の下へ滑空していったようだった。

世紀の大発見だ!

そう興奮して走って家に帰り、母に「すげーデカいバッタいた!」と伝えるも「はいはいまずは手洗いね」と軽くあしらわれてしょんぼりした。

胴が細長くて頭が尖っていたから、ショウリョウバッタかな。
子供の記憶だから誇張されているんだろうけど、それでも20センチは軽く超えていたように思う。

腕に乗せたら同じくらいだろうな、と思ったのを覚えている。
今年のお盆は久しぶりにあの田舎へ行くので、巨大バッタ捕獲計画を練っている。