振り向いたら女の人が立っていた状況って怖い話のテンプレなんだろうけど、この前そんな体験をした。

ゴープロってカメラを買ったので、温泉街の廃ホテルに友達と2人で車で行ったんだよ。
ホテルの駐車場に黒い軽自動車が止まっていたので、俺の車にいたずらされても困るし、少し離れた所に車を止めて廃ホテルへ向かった。

廃墟探索で1番怖いのは他の廃墟探索してるグループと鉢合わせすること。

俺も友達もちょっと警戒しながら探索し始めたんだ。

一通りカメラで撮って落ち着いた所で「叫び声あげたらあいつらビビるかな」なんて友達が他のグループを脅そうって言うから、奇声あげたりガラス割ったり、ロッカー倒したりしてた。
鉢合わせした時に喧嘩になりそうでちょっと怖かったんだけど、案の定鉢合わせした。

俺たちがふざけてたのは長い廊下の真ん中の客室。
階段が廊下の左右の端にあるんだが、俺らが廊下に出た時に、そのうちの一つの階段から他のグループの奴らが来た。

遠目だったし暗かったけど、たぶんヤンキーみたいな男6人くらいだったと思う。
俺らを見つけるとなんか話し合ってたんだが、たぶん「叫んでたのあいつらじゃね?」みたいな話をグループ内でしてたんだと思う。

そのうち「お前らちょっとこいよ」ってそのグループの強面の奴が言ってきた。

完全に絡まれたと思って俺らは無言で逃げたんだよ。
そっからはもう追いかけっこみたいな感じになって出口に向かって走り続けたんだ。

後ろから「まてやぁあああ!!」とか「ごらぁああああ!」とか叫び声が聞こえる。

やっと外に出れたんだけど、こっからが不思議な話。
俺らが鉢合わせしたのは3階で、そのグループとは10メートルくらい離れてた。
だから追いつかれはしなかったんだが、階段を下ったあたりから叫び声がしなくなった。

追いかけてくる様子も無かったので、出口付近で友達とあいつらどこいった?みたいな会話をしてた。

本当に追いかけてきてないのかホテルの中の方向を向いて確認してから前を向いた時、最初に書いたように、10センチくらいの近さで目を見開いた知らない女の人がこっちを見てた。

もう本能的に逆方向のホテル内に逃げた。
そして適当なところに隠れてしばらく経ってから外に出た。

そしたら来た時にあったはずの軽自動車が無くなってた。
エンジン音は俺も友達も聞いてないから女の人のこともあったし、あのグループ自体もお化けだったんじゃないかって話してた。

その後ゴープロを確認してみたんだけど、俺らがふざけ終わって客室から出た時に、端の階段から来たのは、あの女の人「達」だった。