数年前、実家に帰省するために車で山沿いの道を走っていた。
街灯が全く無い道で、頼りは車のライトだけなのに、靄まで出てきて、雰囲気ができすぎていて自然とアクセルを踏み込んで車を飛ばした。
車がスピードに乗り始めたころ、突然、右の藪から鹿が飛び出してきた。
飛ばしていたせいで、ブレーキが間に合わず、ドンという鈍い音がして鹿は車体の数メートル先に転がった。
車はすでに止まっていて、ライトが鹿の死体を照らした。
『やってしまった・・・』とか『車体は無事だろうか』などの思いが頭の中をぐるぐるしながらライトに照らされた鹿の死体をボーっと眺めていたが、まず車体の無事を確かめようとドアに手をかけたとき、ドンっとまた車に衝撃が走った。
街灯が全く無い道で、頼りは車のライトだけなのに、靄まで出てきて、雰囲気ができすぎていて自然とアクセルを踏み込んで車を飛ばした。
車がスピードに乗り始めたころ、突然、右の藪から鹿が飛び出してきた。
飛ばしていたせいで、ブレーキが間に合わず、ドンという鈍い音がして鹿は車体の数メートル先に転がった。
車はすでに止まっていて、ライトが鹿の死体を照らした。
『やってしまった・・・』とか『車体は無事だろうか』などの思いが頭の中をぐるぐるしながらライトに照らされた鹿の死体をボーっと眺めていたが、まず車体の無事を確かめようとドアに手をかけたとき、ドンっとまた車に衝撃が走った。
なんと、また右の藪から鹿が車にぶつかってきたのだ!
しかも、藪から飛び出してきた鹿は一匹や二匹ではない。
車のすぐ側を、ライトの先を何十頭もの鹿が藪から飛び出して道路を横断していく。
呆然とその光景を眺めていると、ライトの先で一際大きく右側の藪が揺れた。
次に藪から出てきたのは鹿じゃなかった。
もじゃもじゃの頭髪が顔を覆い、首の位置から足元まで長い毛で覆われた“なにか”だった。
頭髪の隙間から二つの目だけがらんらんと光っていたのを覚えている。
瞬間、あの鹿たちはこいつから逃げていたのだと悟った。
そいつは俺が轢いた鹿の死体に四つん這いになってゆっくり近づくと、しばらく匂いをかぐように頭を動かしていたが、おもむろに鹿の死体を片手で担ぎ上げながら立ち上がった。
こっちを見た。
毛むくじゃらの中の二つの目と俺の目が合った気がした。
こっちに来る?と思った俺はパニックになり、半狂乱でクラクションを叩いた。
クラクションの音は思った以上に山中に響いたように思う。
そいつはびくっとしたかと思うと、また四つん這いになってあっという間に藪の中に消えていった。
しばらくクラクションを連打していたのだが、突然、恐怖心が全身にきて、慌ててアクセルを踏み、そこから離れた。
気づけば実家にたどり着いていて、顔面蒼白の俺を両親はかなり心配したが俺は何も言えなかった。
眠れないまま夜が明け、夢だと思いたかったが、朝日に照らされた車のフロントには、鹿の血液と体毛がべったりと付いていた。
しかも、藪から飛び出してきた鹿は一匹や二匹ではない。
車のすぐ側を、ライトの先を何十頭もの鹿が藪から飛び出して道路を横断していく。
呆然とその光景を眺めていると、ライトの先で一際大きく右側の藪が揺れた。
次に藪から出てきたのは鹿じゃなかった。
もじゃもじゃの頭髪が顔を覆い、首の位置から足元まで長い毛で覆われた“なにか”だった。
頭髪の隙間から二つの目だけがらんらんと光っていたのを覚えている。
瞬間、あの鹿たちはこいつから逃げていたのだと悟った。
そいつは俺が轢いた鹿の死体に四つん這いになってゆっくり近づくと、しばらく匂いをかぐように頭を動かしていたが、おもむろに鹿の死体を片手で担ぎ上げながら立ち上がった。
こっちを見た。
毛むくじゃらの中の二つの目と俺の目が合った気がした。
こっちに来る?と思った俺はパニックになり、半狂乱でクラクションを叩いた。
クラクションの音は思った以上に山中に響いたように思う。
そいつはびくっとしたかと思うと、また四つん這いになってあっという間に藪の中に消えていった。
しばらくクラクションを連打していたのだが、突然、恐怖心が全身にきて、慌ててアクセルを踏み、そこから離れた。
気づけば実家にたどり着いていて、顔面蒼白の俺を両親はかなり心配したが俺は何も言えなかった。
眠れないまま夜が明け、夢だと思いたかったが、朝日に照らされた車のフロントには、鹿の血液と体毛がべったりと付いていた。
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