知り合いの話。
彼の祖父が猟師をしていた頃、奇妙な動物が出ていたのだそうだ。
繁みの中で動く影を首尾よく撃ってみると、カンと硬い音がする。
確かに当たった筈なのに、ザッと走り去る音が聞こえ、繁みには何も残っていない。
ただ潰れた鉛の玉が、地面にポツリと落ちているだけ。
そういうことが何度かあった後、遂にその生き物の姿を拝むことに成功した。
薄い笹藪から出て来た物、そいつはヨタヨタと二本足で立つ、鼬のような動物だった。
異様なのはその頭部だった。
黒い鉄鍋を被っていたのだ。
彼の祖父が猟師をしていた頃、奇妙な動物が出ていたのだそうだ。
繁みの中で動く影を首尾よく撃ってみると、カンと硬い音がする。
確かに当たった筈なのに、ザッと走り去る音が聞こえ、繁みには何も残っていない。
ただ潰れた鉛の玉が、地面にポツリと落ちているだけ。
そういうことが何度かあった後、遂にその生き物の姿を拝むことに成功した。
薄い笹藪から出て来た物、そいつはヨタヨタと二本足で立つ、鼬のような動物だった。
異様なのはその頭部だった。
黒い鉄鍋を被っていたのだ。
そいつはしばらく明後日の方を見つめるように立ち竦んでから、パッと四つ足になり山奥へ奔り消えた。
鍋を被ったままで。
「先達の猟師に聞いたところ、どうやらアレはナベカブリというものらしい。“鍋頭”と書いてそう読むんだと。名前と姿が伝えられてるってことは、昔から出没してたってことなんだろうな」
祖父さんはそう言ってから「化かされたような気分だったよ」とボヤいていた。
鍋を被ったままで。
「先達の猟師に聞いたところ、どうやらアレはナベカブリというものらしい。“鍋頭”と書いてそう読むんだと。名前と姿が伝えられてるってことは、昔から出没してたってことなんだろうな」
祖父さんはそう言ってから「化かされたような気分だったよ」とボヤいていた。
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